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褪色の王
かつて、世界の裏側を統べる王がいた。
王はたった一人で深淵を支配し、深淵こそが彼だった。
ある日、彼は黒を吐き出して事切れた。広がったのは、病の黒。
彼の身体は朽ち果てて、
緑色に濁る膵臓からは森林を。
青ざめた皮膚からは宮殿を。
湧き上がる赤い血液からは火山帯を。
王の身体はその髪一本に至るまで無数の次元世界を生み出し、
それぞれは混じり合うことなく文明を切り開いていった。
これは、「人間」が未だ文明という言葉すら持たざる程、遠い昔のことである。
だが、王に真なる滅びは存在しなかった。
悠久の時を経て、彼は残った白骨から、復活を試みることにした。
裏側の世界、「人間」が支配する色彩豊かな青い星。
彼らの持つ「生命素(ソーマ)」を糧とするべく。
王は時間や文化、その垣根を超えて色の力を操る人間を選び出した。
それが痛み持つ者、ペインターである。
ペインターを戦わせるたびに、褪色の大地は色に満たされていく。
それこそが王の本当の目的であるなどと、知る者はいない。
———ただ、王は待ち続ける。
いつか本当の力を取り戻し、
再び世界を支配することを。
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